プロジェクターの使い道と言えば、ホームシアターか仕事のプレゼンで使うものだという先入観があったが、最近の製品を見ているとどうやらそれだけではないようだ。最近では、バッテリー内蔵型のプロジェクターが発売されておりキャンプに持っていきみんなで動画を見たり音楽を流したりと使用用途が多様になっている。今回はベンキューが発表したばかりの最新モバイルプロジェクター「GS2」のレビューをしたいと思う。
バッテリー内蔵でWi-Fiを使ったワイヤレス接続といった特徴を持つ「BenQ GS2」がどういう人にオススメなのか、実際に使用してみて気付いた良い面・気になった面を見ていきたいと思う。
この記事で知ることができること
- 「BenQ GS2」の特徴やスペック
- 実際に「BenQ GS2」を使用してみた感想
- 「BenQ GS2」はどういう人にオススメか
目次
BenQってどういう企業?
BenQ(ベンキュー)は台湾を拠点とする電気製品メーカー。多くの地域で展開しており、日本ではベンキュージャパン株式会社が運営している。
多くの製品を販売しており、目立つところで
- 液晶モニター
- プロジェクター
- 電子黒板
- デジタルサイネージ
- 照明機器(参考:BenQ Screenbar)
等が挙げられる。どの分野でも高い評価を得ているが今回レビューするプロジェクター分野(4K DLP部門)では2019年の日本シェアトップを誇り、2020年第1四半期もNo.1だったという。また、日本だけにとどまらずオーストラリア、インド、サウジアラビア、アラブ首長国連邦でもシェア率No.1という実績を残している。
今回はそんな4K DLPプロジェクターで日本シェア率No.1を誇るBenQの最新モバイルプロジェクター「GS2」をレビューしていきたいと思う。
ひと目で分かる「BenQ GS2」の特徴まとめ
「BenQ GS2」のイチオシ
- プロジェクター調整の面倒臭さを省くオートフォーカス機能
- バッテリー内蔵・Bluetoothスピーカーを搭載
- 子どもの目の安全を意識したアイプロテクションセンサー
- 少しなら雨にぬれても大丈夫なIPX2準拠の耐水性及び0.5mからの落下衝撃耐性
- 内蔵バッテリーのみで3時間駆動 映画1本まるまる視聴が可能
「BenQ GS2」の特徴的なスペック
- 1280×720(720p)解像度
- 500ルーメン
- 4W(2W×2)スピーカー
どういう場面での使用を想定しているか
- キャンプのようなアウトドアで
- 庭先のバーベキューで
- 家の中の好きな場所で家族と気軽に
販売価格
- \100,807
(2020年8月Amazon調べ)
「BenQ GS2」が持つ特徴的な機能
ベンキューのモバイルプロジェクター「GS2」は多くの機能や特徴を持ち合わせているが、このプロジェクターは家族での利用や子どもが扱うことを想定して設計されていることが大きなポイントの1つだと言えるだろう。
アウトドアでの使用を想定した特徴はもちろんだが、特に子どもが使うことに配慮されている。
プロジェクターはその特徴から、非常に強い光を出し続けるため覗き込むのは厳禁。やったことある人ならわかると思うが、目にとても悪い。子どもの場合は重大な事故にもなり得る。
「GS2」には子どもがふいにやってしまうアクシデントを回避するための機能や設計が施されているので、それらを紹介したいと思う。
子どもがあつかっても安心な防滴・落下衝撃耐性
キャンプのようなアウトドアや子どもが使うシーンで助かる大きな特徴が「IPX2」準拠の防滴性能を持ち、また0.5mまでの落下衝撃耐性を備えている。
そのため、子どもがあつかって誤って「GS2」を落としたり、水をこぼしても大丈夫な筐体になっている。もちろん、大雨にさらすのは「IPX2」がカバーする範囲を超えるためNG。外で使っていて雨が降ってきたら素直に片付けよう。
- IPX2:垂直より左右15°以内からの降雨によって有害な影響を受けない
子どもが覗き込むと自動でLEDライトをシャットアウト
「GS2」にはオートブランク機能が搭載されており、プロジェクター前側についているアイプロテクションセンサーで、前方30~50cmの範囲で動いている物体を検知し、自動的にプロジェクターのライトが消されるようになっている。
これは、子どもが不意に覗き込んで目を痛めることを避けるための機能。
他にも、子どものプロジェクター利用時間や視聴できるコンテンツを制限できるペアレンタルコントロール機能も搭載されている。
これらの機能はデフォルトで無効にされているため、機能を使用したほうが良い場合は設定のペアレンタルコントロールから有効にできる。
実際に有効にしてみた感じ、映像の光に遮るものが入って1秒程度で映像がオフになる。遮るものがなくなれば自動的に再度映像が映される。
レンズ調整をスグ終わらせるオートフォーカス機能
一般的なプロジェクターは投影位置を調整したり、レンズのピントを合わせるためにダイヤルを回したりと、設置に手間がかかる。
しかし、「GS2」にはピントを自動で調整してくれるオートフォーカス機能が搭載されており、フォーカスをオンにすると自動的にピントを合わせてくれる。フォーカスは本体とリモコン(コントローラー)にボタンが設けられているため、椅子に座ったままピントを微調整することも可能。
慣れればピントを合わせる手間はなんてこと無いが、プロジェクターに不慣れな場合は結構助かる機能だ。
3時間駆動の内蔵バッテリー
プロジェクターと聞くとデスクトップPCのように常に電源を供給するためにケーブルを接続した状態で使用するイメージがある。実際多くはそうだ。しかし、「GS2」には内蔵バッテリーが搭載されており3時間内蔵バッテリーのみで使うことができる。
家の中の同じ場所でしか使わない場合「GS2」の内蔵バッテリーに助けられる場面はあまり多くないかもしれないが、家の中でも使う場所が1箇所とは限らない場合は電源確保やコンセントの位置を考えると言った面倒を考えなくてよいのが内蔵バッテリー搭載プロジェクターの魅力。
そして何より、キャンプのような屋外でプロジェクターを使う場合にとても助かる部分だ。外でみんなでワイワイしながら2時間映画や動画を1本見終わってもまだ内蔵バッテリーだけで使える。
プロジェクター単体あれば音楽も聴ける4W、Bluetoothスピーカー
ホームシアター系のプロジェクターにはスピーカーが内蔵されておらず、別途用意する必要がある場合が多いが、「GS2」には4W(2×2)のBluetoothスピーカーが内蔵されているため、プロジェクター単体で動画や音楽を楽しむことができる。
音質については後述するが、可もなく不可もなくといった印象。良すぎず悪すぎず。これ単体で問題ないレベルではある。
「BenQ GS2」のデザインについて
「BenQ GS2」が入っている梱包を解くと、少し大きめのお弁当箱が出てくる。このお弁当箱(ケース)の中にプロジェクター本体が入っている。また、ケースの方ではなく箱の端にワイヤレスドングルや説明書が取り付けられてる。コンパクトな梱包のため気をつけないと見落としそうになるので注意。
「GS2」本体が入っているこのケースはスマホとほぼ同じ高さ。プロジェクターと聞くと、大きなイメージを持つが「GS2」は非常にコンパクト。そしてケースだけ持ち歩いても違和感のないデザインが良い。
実際に「GS2」を外で使う時はカバンに入れてるかもしれないが、コンパクトでそれ単体でもひと目を気にせず持ち歩けるケースは良いと感じる。
ケースの中身を全部出したらこんな感じ。左側にプロジェクター本体が、右側には各種ケーブルが入れられている。また、この仕切りはマジックテープで止められているため、邪魔であれば取り外したり仕切りの幅を変えられる。
さて、ここから本体。
「GS2」にはリモコンも付いているが、本体でも簡単な操作ができる。ただし実際に使って分かったことだが、リモコンは必須。これは間違いない。
リモコンはボタン電池で最初から1つ用意されている。とても薄く軽量、そして反応も良い。
背面には充電ポートが用意されており、「GS2」の充電ポートはマグネット式を採用している。そのため、不意に子どもがケーブルとプロジェクターの間を横切っても本体が落ちずにケーブルが外れるようになっている。正直最初は何でマグネットだろう?と思ったが、「これが狙いか!」と気付いてからは認識を改めた。
「BenQ GS2」のスペック(仕様)について
用意されているポートは何があるの?
「GS2」には多くのポートが用意されており、最も使うであろうHDMI端子はもちろん、USB-Cも使用することができる。
HDMIのバージョンは「HDMI1.4」なのでPCゲームのような高リフレッシュレート系には向かないが、「GS2」での使用が想定されるスマホの映像やPS4・Nintendo Switchといったゲームであれば十分楽しむことができる。
スマホの場合は、HDMIケーブルを使用せずにWi-Fiを利用することでワイヤレスでキャストすることができる。
ポートの左上にある大きな穴にはUSBポートのワイヤレスドングルを挿入することができる。ワイヤレスドングルを挿入した状態でもカバーを付けられるので基本的に挿しっぱなしでOK。取り外す時はマイナスドライバーを使うと傷つけずに取り外せる。手で取り外すのはおそらく難しい。
「GS2」の仕様
実際に「BenQ GS2」を使ってみた感想
ここからは実際に「GS2」を使ってみて感じたことを書いてみたいと思う。
基本的にプロジェクターとしての品質は高く、普通に使う上で目立つストレスはない。
この前提の上で、「GS2」を知る上で書いたほうが良いなと感じた点を書いてみたい。
映像の映し方は大きく2つ
「GS2」を使って映像を映す方法は大きく2つ。
- HDMI等を使った有線接続
- Wi-Fiを使ったワイヤレス接続
1つ目は多くのプロジェクターと同じような使い方。これはPS4やNintendo Switchのようなゲームの映像を映したい時、パソコンの映像を映したい時に重宝する。
2つ目はスマホの映像をプロジェクターに映すことに特化させた機能。実際に使ってみた感じスマホからYouTubeの映像をプロジェクターで映したい時に重宝する。
プロジェクターとスマホのWi-Fi接続先が同じであればスマホの「Smartview」を使ってすぐに映すことができる。
スマホ映像の映し方にも2通りある。
- スマホの映像をそのまま映す(いわゆるミラーリング)
- Chromecastのように動画だけ飛ばすやり方
前者はスマホの画面をそのままプロジェクターに映すため、このやり方で動画を見る場合はスマホの画面もつけたままになる。一方後者は、プロジェクターに見たい動画を映すだけでスマホ側は画面を消しておいても良いし、別の画面を開いていても良い。
スマホの画面を見せながら何か説明したい時はミラーリングを、動画や音楽をみんなで楽しみたい時は後者という認識で良いだろう。
プロジェクターの性能は十分だが
さて、プロジェクターの映像品質は基本的に綺麗で文句の付け所はない。
だが「TK800M」のように明るい場所で快適に使えるかと言われるとこれは×。
また、投影サイズが約50インチを超えるものになると出力解像度が720pであることもあり、やや粗さを感じる。
「GS2」はそもそも4Kの精細な映像を体験することに重きをおいておらず、携帯性やバッテリー内蔵といった通常のプロジェクターにはない機能を持っていることが大きな特徴であり魅力になるため、息を呑むような映像を体験することには向いていない。
つまり、どんな場所でもみんなで動画や音楽を楽しめるプロジェクター、ここに惹かれるのであればおそらく満足できる。
今まで使ってきたプロジェクターで一番静か・熱(暑)くない
これまで4Kプロジェクターを中心に多くのプロジェクターを体験してきたこともあるだろうが、これまで使ってきたどのプロジェクターよりも「GS2」は静かだったように思う。
プロジェクターは通常使用時に冷却のためのファンが回る。この音が割と大きく、ファンの風が熱いのだが、「GS2」をしばらく使ってみたがファンの音はもちろん、ファンからの熱もほんのり温かい程度で部屋の温度が明らかに変わるようなものではなかった。
おそらく出力解像度が720pに抑えられていることもあり、発生する温度が限定的なのではないかと思う。出力解像度を限定していることは同時に内蔵バッテリーの持ち時間を向上させることにもつながっているはずだ。
使い勝手的にリモコンは必須
「GS2」には本体上部にかんたんな設定変更を行うためのボタンが用意されているが、別途リモコンが同梱されている。リモコンはボタン電池で最初から1つ用意されている。
基本的にプロジェクターの設定はこのどちらかを使用して行うのだが、リモコンが便利。逆に言えば本体のボタンが不便。
50cmの高さからプロジェクターを落としても故障しない落下衝撃耐性を保つ設計になっていることが関係していると思われるが、本体で設定を変更する時はボタンを押し込むように押さないと反応してくれないことがあった。ボタンが反応する位置が遠いというべきなのだろうか。
それに比べるとリモコンの反応がとても軽快で音量変更も軽々。そして本体を触るとどうしても映像が揺れてしまうため投写中は極力本体には触りたくない。そういう部分も含めて「GS2」ではリモコンが必須だと感じた。
音質は特別良いとは言えないけど
続いて「GS2」に内蔵されている2W×2の4Wスピーカー。
一言で言うなら普通。これに尽きる。
「このスピーカー、音質良いなあ」となるような音ではないのだが、聞くに堪えない悪さでもない。
音質について解説する時によく低音の響きや高音の抜けといった言葉を使うが、これらを気持ちよく感じられるほど音は良くない。
だが、音自体には厚みがあるため屋外で使って音が小さい・何を言ってるか聞き取れないと感じることはほぼないと言える。
人によって感じ方様々な音質だが、「この音質じゃ音楽は聴いてられない」となる音ではなかった。僕は普通に聴ける。聴き入るには物足りない。
BenQ GS2:総評・まとめ
- 映画一本まるまる見れる内蔵バッテリー
- スピーカー内蔵でGS2単体で楽しめる
- 子どもが使うことも想定した安全設計
- 説明書なしだと設定がやや面倒
- 投影サイズが大きいと気になる720p解像度
「BenQ GS2」はプロジェクター単体のクオリティで見ればより良い製品はBenQの中にもあるが、ターゲットがかなり絞られていて新しい切り口だなと感じる。紹介したとおり、どんな場所でもみんなで動画や音楽を楽しめるプロジェクターを欲しいと感じるのであれば満足できるのではないだろうか。
逆にターゲットが絞られている分、あなたが求めているものと一致しているかどうかには注意する必要がある。