僕は映画が好きだ。しかし、映画館はあまり好きではない。
こういう人多いのではないだろうか。映画の好き度で言えば時間さえ確保できれば毎日でも観たいと思うけれど、映画館の食べ物の匂いや人の雑多な感じ、そして上映時間が決まっているため好きな時に映画を見れない等々が苦手だという人。誤解のないように言っておくと、映画館で見る圧倒的な迫力や音響は大好きだ。
実際こういう人多いだろう。そういう人達は家で可能な限り映画館に近い環境を構築するためにホームシアターに興味をもつだろう。初めてホームシアターを構築しようと考えているけど、映像のクオリティが高いプロジェクターが欲しい。でも、良く分からん、という「映像クオリティには拘りたいけどホームシアター初心者だから良くわからないよ」、という人向けのプロジェクターが発表されている。
BenQが先日発表したばかりの最新プロジェクター「HT5550」が上記の人達に圧倒的におすすめなプロジェクターなのだが、今回特別に最新プロジェクター「HT5550」を提供していただいたので、特徴や魅力、気になった点をレビューしていきたいと思う。
初めてのホームシアター構築の一助になれれば幸いだ。
HT5550の製品ページ:https://www.benq.com/ja-jp/projector/cineprime-home-cinema/ht5550.html
目次
「BenQ HT5550」の特徴について
「HT5550」ってどんな製品?
- 2019年5月30日より発売される最新プロジェクター
- CinematicColorとHDR-PROテクノロジーを採用
- 疑似4Kではなく、3840×2160出力が可能なTrue 4K
「HT5550」は誰向けの製品?
- 本格的に映画や映像を楽しむ為にホームシアターを構築しようと考えている人向け(超本格エントリーモデル)
BenQの「HT5550」は2019年5月30日より発売される最新プロジェクター。「HT5550」は4K HDR対応のプロジェクターだがより映像を美しく快適に視聴するために多くの新機能が搭載されている。この「HT5550」は本格的にホームシアターを構築しようと考えているユーザー向けのプロジェクターと位置づけられているため、BenQではAVコンテンツマニア向けのエントリーモデルと題している。そのため、エントリーモデルと謳いながらあくまでもターゲットは映像体験を本格的に楽しみたいユーザーになるため価格は一般人から見ると高め。
しかし、「HT5550」を実際に使ってみると30万円という価格設定はむしろ他社製と比較するとかなり良心的なのではないか、という結論に至った。実際に使ってみての感想は後述するが、「HT5550」にはこの価格を納得させるだけの多くの機能が搭載されており、これらの機能はBenQ独自のものやこの価格帯では中々搭載されないものまで様々だ。
特徴的な機能として「CinematicColor」と「HDR-PRO」と呼ばれる2つの機能が搭載されており、これはどちらもBenQ独自機能となる。また、モデルによってDCI-P3カバー率が異なるがこの「HT5550」はこれを100%カバーする。1ランク下の「HT3550」では95%までカバーしている。
「CinematicColor」や「HDR-PRO」があると何が良いの?
僕らは日常的に映画や動画をスマホやディスプレイなどを利用して観ている。人によっては既にプロジェクターを利用しているかもしれない。しかし、日常的に観ているこれらの映像は本当にオリジナルの映像だろうか。
違う。そういう話ではない。
分かりやすく言うと、映像制作者が意図した映像を本当に見ているのかという話だ。例えば映画であれば主に映画監督が様々な意図を映像に込めるだろう。極端な話、このシーンでは部屋の明るさはこれぐらいが良いな、とかこのシーンではこの色、このキャラクターはこの色の服が良いだろう。というように非常に細かな設定がある。映像を本格的に楽しむというのはオリジナル製作者が本当に意図したものを観てこそなのではないかと思うのだ。
スマホやディスプレイで映像を視聴することを否定はしないし、メジャーな方法だとは思うのだが、やはり一般的なディスプレイでは相手が意図した通りの映像を視聴できている割合は絶望的に低いだろう。元々色温度が高いディスプレイだったり、コントラストが高いもの。様々だ。
「HT5550」に搭載されている「CinematicColor」や「HDR-PRO」は映像を本当に楽しむ事を追求した機能。これらの機能、特に「CinematicColor」で色域カバー率100%を実現することで、あらゆる映像の色を正しく表現・再現することができる。
「HT5550」に搭載されている映像モードについて - このモードはいつ使う?
ホームシアターを構築する上で推奨される環境は確かにあるだろう。とは言え、実際にプロジェクターを設置するのはそれぞれの「家」であり、「部屋」だ。何が言いたいんだ?と言われそうだが、やはり個人の部屋ごとに環境は異なる。そのため、プロジェクターを設置したのにある部屋では最高。ある部屋では「あれ?」なんてこともやはり起こり得るだろう。
「HT5550」でもこれらの発生を完全に防ぐことは難しいだろう。しかし、このプロジェクターには様々な場面場面で最も良い映像を提供するために多くの映像モードが搭載されている。
多くの方のイメージ通り、プロジェクターが本領を発揮できるのはやはり「暗い部屋」だ。プロジェクターが発する光を余すことなくスクリーンや部屋の壁に映すことができるのはやはり暗い部屋が望ましい。
上記のように周囲から光が差し込まないレベルで暗さが確保できている場合は「D.Cinema」モードか「HDR10/HLG(DCI-P3)」モードでの視聴をオススメする。
- D.Cinemaモード:1920×1080(フルHD)解像度の動画を観るのに最適なモード(DCI-P3カバー率100%の色域を利用)
- HDR10/HLG(DCI-P3)モード:4K UHDブルーレイやHLGのストリーミングコンテンツをBenQ独自の「HDR-PRO」機能を活用して視聴するのに最適なモード(DCI-P3カバー率100%の色域を利用)
上記2つのモードが十分な暗さを確保できている場合にオススメなモードだが、やはりリビング等にプロジェクターを設置しているといくら遮光カーテンを使用していても多少光が差し込んでしまう環境は多いのではないだろうか。僕も色々試行錯誤したが、現状日中の光を完全に遮断するのは無理だと判断した。こういう環境の場合は「Cinema」モードか「HDR10/HLG」モードがオススメ。
- Cinemaモード:1920×1080(フルHD)解像度の動画を観るのに最適なモード(Rec.709カバー率100%)
- HDR10/HLGモード:4K UHDブルーレイやHLGのストリーミングコンテンツをBenQ独自の「HDR-PRO」機能を活用して視聴するのに最適なモード(Rec.709カバー率100%)
上記モード変更だけで快適な映像を体験できない場合はより細かく輝度やコントラストの設定等を変更することができる。
「BenQ HT5550」がサポートするポートやスペックについて
BenQの最新プロジェクター「HT5550」には多くのポートが搭載されているが、主に使用する出力ポートは「USB3.0」、「HDMI2.0」の2つ。どちらも「HDMI2.0」対応なのは個人的にとても大事なポイントだ。
また、1ランク下の「HT3550」には内蔵スピーカーが搭載されているのに対して、上位モデルの「HT5550」は音響システムも構築することを前提に設計されているため、内蔵スピーカーが搭載されていない。この点、これからホームシアターを構築しようと考えている人は注意しておきたい。とは言え、迫力のある映像と迫力のある音声を求めるのであれば音響システムの構築も必須になってくるため、ホームシアター構築を検討している人にとっては当たり前かもしれない。
「BenQ HT5550」のデザインについて
「HT5550」のデザインはマットブラックで、とても格好良い。レンズが中央に大きくドンと配置されており、レンズを中心に若干筐体が湾曲している感じ、とても良い。男の子は多分大体好き。そんなデザインだ。しかし、ゴテゴテしているわけではなく、あくまでもBenQのシンプルなデザインは健在。このマットブラックは単なるカラーリングではなくて、投写時に映像が反射して没入感を損なわせないようにするための配慮なんだとか。
上述のスペック一覧に記載しているが、「HT5550」の重量は6.5kgと本格的なプロジェクターと比較すると軽量タイプだと言えるだろう。とは言え、プロジェクターと比較すると軽い分類であって、6.5kgはそこそこ重たい。持ち運びに苦労するほどの重さではないが、調整を行うために持ち上げたり抱えたりする場合は女性はちょっと疲れるかもしれない。一般的な男性であれば問題ないだろう。
「BenQ HT5550」の使い方や設置、及び調整方法
プロジェクターを設置する場合、色々な形が考えられる。1つはテーブル上に置くという場合。そしてより本格的な場合は宙吊りという形。宙吊りの方がプロジェクターが邪魔にならないだろうが、一般的にはテーブルや棚の上に置くというパターンが多いのではないかと思われる。
そのため、ここではテーブルや棚の上に設置する場合の調整方法について簡単に気になったこと、「お、これ優しい」と思ったことを書いておきたい。基本的にプロジェクターの設置方法や使い方はどれも同じだと思われる。
- 接続する機器とプロジェクターを接続する
- 電源ケーブルを接続し、「HT5550」の電源をオン
- 電源のオンが確認できたら待つ
基本的に「HT5550」の使い方は上記の通り。「HT5550」の電源の付け方だが、本体後ろの左下に配置されてある電源ボタンを押して電源をつけても良いし、付属のリモコンを使用しても良い。
1つ注意点?として、「HT5550」は電源つけてから画面が投影されるまで若干時間がかかる。そのため、僕も「あれ?これで良いんだよな?」と思ったが、少し時間が経つと「HT5550」は自動で入力ソースを判断してくれるので、準備ができ次第自動で映像を映してくれる。映された映像が異なる場合は、「SOURCE」ボタンを押すことで変更可能だ。
ピントの合わせ方はとても簡単。レンズ部分のダイヤルをくるくる回してるとピントが合う。以上だ。同じくレンズ部分にあるズームを利用する場合は先にズームしてからピントを合わせたほうが良いだろう。
プロジェクター「HT5550」の投影位置を調整する方法について
プロジェクターの投影位置の調整はプロジェクターによってサポートしている機能が異なるため、方法はまちまち。
「HT5550」には本体前方下部に水平角度を調整するための足が搭載されており、これを手動で伸ばしたり縮めたりすることで映像を水平に映す事ができる。
上記画像は撮影のために本体をひっくり返した状態で、調整を行っているが「HT5550」の「おお、これ便利だ!」と思った機能がこの部分に1つある。通常であればこの足の高さを調整する時は本体を少し持ち上げて、回して、水平になっているか確認して、少しずれていたらまた持ち上げて…。という手間が発生する。
しかし、「HT5550」は本体をテーブルに置いたまま、この足を回転させることができるため、持ち上げたりする手間が必要なくリアルタイムで水平になっているか確認することができる。
やはり足の高さ調整よりも高い位置に映したい場合や逆に低い位置に映したい場合が出てくるだろう。「HT5550」には本体上部に2つのノブが取り付けられており、この内左側を回すことでプロジェクター本体を動かすことなく、投影箇所の高さを変更することができる。右側のノブを動かすとプロジェクター本体を動かさずに投影箇所を左右に調整できる。
上下の調整は「そんなにできるのかよ!?」って言うほど、数字にして60%調整可能だが、左右は23%と上下に比べて調整可能な範囲が限られているため、できるだけ左右はスクリーンに垂直になるように配置するように心がけておきたい。
「HT5550」を実際に使用してみての感想
「HT5550」は本格的に映像を楽しむ環境を構築したいエントリーモデルという位置付けだが、実際に使用してみると段々疑問になってくる。「何でこんなに綺麗なんだ?」と。
僕はプロジェクター等に関して正直に特別な知見を持ち合わせているわけではないため、この色域だからこれだけ綺麗なんだよ。みたいな用語を用いて説明することはできないが、「HT5550」只々凄い。
迫力は大画面で投影したため、抜群にある。しかし、今回驚かされたのはこの迫力ではなく、色の質感や深み、そして映像の1つ1つが非常に細かく映し出されているという点。
上記は鳥がメインの画像だが、色の豊かさが少しでも伝われば幸いだ。僕が実際に見ているものを本当は画像として撮影できればよいのだが、その機材を持ちわせていないのが本当に悔やまれる。色の豊かさは勿論、羽の1本1本まで見えるんじゃないか、という程、非常に?いや異常に?細く映し出されている。
また、プロジェクターの性能を語る上で外せないのが、映画に多い暗い場面で正しく映し出されるかという点。以前レビューした「TK800」ではこの暗いシーンを映した時に見辛さを感じることがあったが、今回の「HT5550」では本当に映画館で観ているかのような映し方をしてくれる。更に上のランクのプロジェクターを使用するとまた見え方は異なってくるのかもしれないが、少なくとも僕の目レベルでは全く問題ない。
と、映す部分に関しては全く問題ないし、想像していた以上に美しさを堪能することができたのだが、気になる点が1つだけ。それは排熱。部屋が暑くなる。
当たり前だ。排熱によって部屋が暑くなってしまうのは、プロジェクターを既に使用したことがある人達なら周知の事実。しかし、初めての場合は知っておきたい部分だ。
提供してもらったからと言って100%褒める必要はない。むしろ書き方は完全自由にやらせてもらってる。だからこそ、気になる部分は書いておきたいのだが、正直分からない。上記の排熱と、起動に時間がかかる、内蔵スピーカー非搭載という3点。
見る人の目によって完璧と呼ぶ度合いは異なるだろうが、僕レベルなら「HT5550」は完璧だった。
まとめ
「HT5550」の魅力をお分かりいただけただろうか。
「HT5550」は一般的なプロジェクター同様、迫力のある映像を映すことは当然可能。それだけでなく、圧倒的に美しく豊かな色味を提供してくれる。毛の1本までハッキリと見えるのではと思えてくる4K解像度に対応している点も良い。
プロジェクターを初めて購入する場合、「HT5550」は販売価格が30万円前後に設定されているため高く感じるかもしれない。しかし、この価格帯でこれだけのクオリティを提供できるプロジェクター中々ないのではないだろうか。
毎日映画館に行けるなら行きたい。しかし、人がいたりCMがあったり、ノイズとなる部分も多いだろう。「HT5550」は本当に映画館で観ているかのような映像美を体験させてくれるため、そういう人の理想にバッチリマッチすると確信した。映画はかなり好きだけど、映画館の人が多すぎる感じはあまり好きじゃないという僕が良いと感じるのだから間違いないだろう。