PCゲームやPS4等のコンシューマー機器。共通して必要な周辺機器の1つ「ディスプレイ」。
求められる性能は機器や用途によって様々だが、ゲームに使用するディスプレイであれば一般的に「ゲーミングディスプレイ」と呼ばれる。
ゲーミングディスプレイの性能を見る際に重要な指標として「リフレッシュレート」が上げられる。PCを用いるプロゲーマーが使用するゲーミングディスプレイの最高峰は2019年時点で「240Hz」リフレッシュレートをサポートするものや、プロゲーマーからプロほどではないが凝った環境でゲームをプレイしたい層は「144Hz」をサポートするものを選択することが一般的になってきている。
一般的なディスプレイは通常「60Hz」のリフレッシュレートにまで対応している。また、PS4やXbox Oneは機器の性能として60Hzが限界になるため、これらをターゲットとした60Hzゲーミングディスプレイも存在する。
今回レビューするPixioの「PX242」はこれらの中間に位置する「75Hz」リフレッシュレートまで対応するディスプレイだ。
そしてこの「PX242」は一般的なゲーミングディスプレイが採用する「TN」パネルではなく、より綺麗な色味を提供する「IPS」パネルを採用している。
一般的に「IPS」パネルを採用するゲーミングディスプレイは数が少なく、またパネル特性上高価になる傾向にあるが、Pixioの「PX242」は一般的なディスプレイと殆ど変わらない価格でこれを販売する。一般的なディスプレイとして、それよりも少し優れたゲーミングディスプレイとしても使用することのできる「PX242」を見ていきたいと思う。
目次
Pixioのディスプレイはどうして他社より安いの?
Pixioのゲーミングディスプレイは今回使用する「PX242」だけではない。様々な種類のディスプレイが販売されているが、どれもライバル機と比較すると価格が明らかに安い。しかし、使用しているディスプレイのパネルはSamsung、LG、AUO等の名だたるメーカーのパネルを使用している。そのため、ユーザーの使用感に関連するパネル等をケチっているわけでは決してない。今回使用した「PX242」や以前レビューした「PX5 HAYABUSA」でも同様だ。
では何故Pixioのディスプレイは他社製と比べて安いのか。
多くの人が気にするのは「安かろう悪かろう」にならないのか?という点。Pixio Japanが公式に明らかにしている情報を基にお伝えしたいと思う。
まず、PixioはAmazonなどのオンライン通販での販売を主な販売元としている。通常であれば、ディスプレイはパ○コン工房やド○パラのような実店舗でも販売されているものだが、Pixioが伝えるところによると日本国内で実店舗にディスプレイを卸しているのは大阪の「ワンズPC」のみなんだとか。
Pixioのゲーミングディスプレイが他よりも安いのはなぜか。それは、ユーザーに可能な限り安価に製品を提供するために中間マージンを徹底して省いているからだ。もちろん、ドット欠け等の不良が確認できた場合には保証してもらえる。そのため、Pixioのディスプレイでは安いから性能が悪いという理屈は成り立たないと考えて良いだろう。
「Pixio PX242」の75Hzディスプレイって60Hzと比べて正直違うの?
75Hzをサポートする「PX242」と一般的な60Hzディスプレイを見比べて違いは分かるのか?という話だが、実際に見て違いは「分かる」。デスクトップ画面でマウスカーソルをぐるぐるやった時の残像感は明らかに違うため、違いを感じることは可能。
しかしながら、75Hzというリフレッシュレートに魅力を感じている人向けに注意だが、当然60Hz→144Hzへの移行時のような圧倒的な感動はないと言える。自分が今使用しているディスプレイから新しいものへと移行する時に何を重要視するか次第だ。
リフレッシュレート値を優先するのであれば、144Hzや240Hzのディスプレイを選択したほうが後悔は少ないはず。あくまでも「PX242」は美しい映像品質を提供する「IPS」パネルを採用していながらコストパフォーマンス抜群、それでいて75Hzにも対応しているよ、という製品だ。おまけと呼ぶには贅沢な機能だが、位置づけとしてはこのように考えて良いと思われる。
※注意点として殆どの場合「PX242」とPCを接続した段階では1920×1080(60Hz)に設定されているため、NVIDIAコントロールパネルより1920×1080(75Hz)へと変更してあげることを忘れないように。
「Pixio PX242」がサポートするポートやスペックについて
23.8インチのディスプレイサイズを持つ「PX242」には2つの出力ポートが用意されている。1つは「HDMI1.4」、もう1つが「VGA(D-Sub)」だ。「PX242」は144Hzリフレッシュレートをサポートしているわけではないため、「HDMI 2.0」ポートではないという点については何も問題はない。
しかし、もう1つのポートが最近のグラボでは対応しなくなってきているVGAを採用している点については注意だ。PCとPS4を同時に接続しておきたいという場合にはPC側がVGAポートをサポートしているかどうかは把握しておきたいところ。また、使用するかはそれぞれだが、オーディオ出力ポートも用意されている。
性能的に必要ないことは承知の上で、DisplayPortやHDMIポートがもう1つあるとより良いのではないかと感じられた。とは言え、これらのポートでも十分に「PX242」の性能を最大限引き出すことができる。
「Pixio PX242」の外観(デザイン)について
「PX242」のデザインを語る上でまず上げるべきはやはり「ベゼルレスデザイン」であるという点だろう。このベゼルレスデザインのおかげで、多くの用途でノンストレスで使用することができる。
「ベゼルレスデザイン」が役に立つのは普通に「PX242」を使用する場面よりも、ディスプレイを2つ使用するデュアルディスプレイとして使用する場合だ。「ベゼルレスデザイン」はそれ1つで使用する場合は格好良さが目立つが、こういった場面ではその枠を超え魅力的な実用性が顔を出す。
「ベゼルレスデザイン」の「PX242」を横に並べても殆ど隙間がないため、視点の移動を最低限に抑えることができ、アプリケーションがディスプレイをまたぐ際も比較的ストレスなく作業を行うことができる。
だが、デザイン・機能面で全く不満がないかと言われるとそうではない。例えば、既に別のディスプレイを使用していて、新たに「PX242」をデュアルディスプレイとして購入する場合。こういった状況ではスタンドに高さ調節機能が備わっているとディスプレイの高さのズレを最小限に抑えることができるため、より良いと感じた。
どうすれば全てが解決するか?「PX242」を2枚購入すれば全ては丸く収まる。と、これは流石にジャーマンスープレックス並の投げ方をしているため、別の方法として「PX242」は背面にディスプレイアーム用のVESA規格(75×75)に対応している。そのため、ディスプレイアームを活用することでこれらの弱点を克服することができるだろう。
最近ではディスプレイアームも安価になってきているように感じるため、併せて購入することを検討しても良いかもしれない。ディスプレイ本体が安価なため、予算的にも対応しやすいのではないだろうか。
「Pixio PX242」を実際に使ってみて
実は「PX242」を使用し始めて既にある程度経過しているのだが、ディスプレイに対する不満は全く上がっていない。「IPS」パネルを採用しているため、映し出してくれる映像が本当に美しい。これまで「TN」パネルを採用するディスプレイを使用していたため、その違いは一目瞭然だった。
また、「IPS」パネルは映す映像が綺麗であることに加えて、「TN」パネルよりも視野角が広いことが魅力の1つ。
例えば、仕事や作業の場面で自分以外の人もディスプレイを見る場合。視野角が狭いディスプレイだと自分が見ている色味と相手が見ている色味、そして見やすさがネックになってくるが、「PX242」は映像品質、視野角ともに優れているため、このような場面でも活躍する。
この視野角という点。上記のようにただ複数人で見る場合だけでない。普通にPS4等のゲームをプレイする場合も同様。皆の家の間取りやディスプレイを置く場所、自分が座る場所は他の人と全く同じだろうか。
ディスプレイの正面に座り、正しい姿勢でプレイするばかりではないだろう。例えば台の上にディスプレイを置き、やや見上げる形でゲームをプレイするシーン。ディスプレイの場所は同じでもプレイする場所や高さ、角度が異なるシーンを想像することもできる。他のシーンに置いても同様。こういう様々なシーンに対応することができることが広視野角を提供するディスプレイの魅力だ。
「IPS」パネルの色味についてだが、上述のように全く不満がない。また、ゲームをする場合はFPSモードやRTSモードに、映画を見る時はMOVIEモードに色味を変更することができる。「PX242」には5つのプリセットが予め用意されているため、簡単に味付けを変更することができる点も評価したい。
「Pixio PX242」はこんな人にオススメ
「PX242」を使い始めて1ヶ月以上が経過した僕がこのディスプレイを人にすすめるなら、どのような用途の時に勧めるかある程度まとまったので以下に示しておく。1つでも該当するなら後悔はしないはずだ。
- 新しくディスプレイを購入しようと検討している場合(一般的なディスプレイ)
- ディスプレイを買い増したい場合(デュアルディスプレイとして)
- 作業もするしゲームもする場合(ゲームはFPS物よりストーリー系)
- PS4やNintendo Switch等のコンシューマー機器で遊びたい場合
逆に、以下のような場合には別のディスプレイを選ぶほうが最適かもしれない。
- PCでFPSやアクション物をランク等意識して本気でプレイしたい場合(144Hz以上のディスプレイをおすすめ)
- 今まで60Hzでより滑らかぬるぬるにゲームプレイを体験したい場合(75Hzより一気に144Hzを購入することをおすすめ)
- 仕事としてデザインを行いたい場合(デザイナー向けディスプレイをおすすめ)
まとめ
「PX242」の魅力は伝わっただろうか。「PX242」は240HzリフレッシュレートやHDR10のような尖った特徴はないものの、多くの場面で対応することのできるディスプレイだと感じた。
また、何と言ってもこの安さでIPSパネル採用、それでいてリフレッシュレートも75Hzとやや高く設定されている贅沢さが魅力だ。IPSパネル採用というだけで、この価格帯ではそもそも選択肢があまりないのが現状。
ゲーミングディスプレイと違い、高みを目指して購入するディスプレイとは異なり、購入パターンとしては一般的なディスプレイの新調や買い増しのタイミングでしか購入しない部類だとは思うが、非常に魅力的な製品がこの価格帯にも潜んでいる。購入の際は有力候補として上げてもよいのではないだろうか。
既に知り合いにオススメし始めている自分がいる。用途さえ間違えなければ大満足できるはずだ。