
最近家電量販店に行き、テレビコーナーに足を運ぶと表に出ている商品の殆どがフルHDではなく4K解像度になっていることが多い。
地上波がフルHDでの配信で4K解像度での配信が行われていないこともあり、実生活では4K解像度の普及を感じることはまだあまりないが、こういった場面に遭遇するとジワジワ来てるなと感じる。
4K解像度の普及を感じるのはテレビだけではなく、ディスプレイ業界においても4Kディスプレイは明らかに増えてきている。
フルHDから4Kへとシフトする流れは映像業界だけでなくゲーム業界においても起こっている流れだ。
eSportsの世界においては、技術的な問題から4K解像度で144Hz以上のフレームレートを安定動作させることが難しいことなどからまだまだフルHDが主流ではあるものの、理由が理由であるために今後間違いなく4Kへとシフトする流れが来るはずだ。
またPS4やXbox One等のコンシューマー機器においても4K解像度を当然のようにサポートするようになってきており、兎にも角にも映像美、と言うほど高解像度化の流れをとても感じる。
ゲーミングディスプレイというジャンルのディスプレイはPCゲーム、特にeSports等の場面においてはここ数年とても普及してきており選択肢の幅がグッと広がってきたと感じるが、4K解像度をサポートしゲームでの使用にも適している「4Kゲーミングディスプレイ」はまだまだ少ない。
4K144Hzや、4K240Hz等のモンスター級のディスプレイは価格的にも使用場面的にもまだまだ現実的ではないため、今回は4K60FPS動作を保証する「BenQ EL2870U」についてレビューしてみたいと思う。
このディスプレイとても万能で、4Kによるストーリー系のゲームはもちろん、盛り上がりを見せるCoDのようなシューティングゲームまで難なく、映し出してくれる。その訳についても見ていこう。
目次
「BenQ EL2870U」の特徴
BenQの「EL2870U」は2018年3月~4月にかけてリリースされた新製品で、4K HDR出力に対応したゲーミングディスプレイだ。
このディスプレイは4K60FPSという動作から、PCを使ったシューティングゲーム(144Hzが求められる)には当然適さない(PCでもストーリーに重点を置くものであれば無問題)のだが、コンシューマー機器においてはとても優れた性能を発揮する。
「EL2870U」はシューティングゲーム等の瞬時の反応が求められるゲームでは大事になってくるディスプレイの反応速度が1msと業界トップレベルになっているのが特徴だ。
1msという高速な応答速度を実現することによって、動画やゲームに残像感を少なくすることができるため、プレイしていて映像がとても滑らかだと感じた。
また、ただ4K解像度をサポートしているだけでなく、より鮮やかな色の表現や深みのあるコントラストを楽しめるHDR(ハイダイナミックレンジ)にも対応しているため、映像がとても綺麗で、特に緑の表現や光と影の表現が非常に豊かだと感じる。
更に、「EL2870U」にはアイケアと呼ばれる目への負担を軽減するためのBenQ独自の技術が搭載されており、通常のディスプレイと比較して目が疲れにくい設計となっている。
このディスプレイに搭載されているブライトネスインテリジェンスPlus(B.I+)と呼ばれる目への負担を軽減してくれる技術はとても優秀で確かに目への負担を軽減してくれる。
しかし実際に使ってみたところこの機能をオフにしておいたほうが良いと感じる場面もあったためそれについては後述したい。
「BenQ EL2870U」がサポートするポートやスペックについて
「EL2870U」で使用することのできるポートは全部で3つあり、HDMI端子が2つ、DisplayPortが1つ用意されている。(イヤホンジャックもあり)
多くのディスプレイと同じようにHDMI端子が2つ用意されているが、「おっ」と思った点として、この「EL2870U」に搭載されているHDMI端子は2つともHDMI2.0をサポートしている。
「HDMI端子を2つ搭載しているけど、規格が異なって1つはHDMI1.4なんだよね。」というディスプレイが意外と多い中、この点とても考えられていると感じた。
というのも、HDMI1.4では4K出力サポートしているもののフレームレートのサポートが30Hzまでなのだ。
それは将来的に4K製品が増え、複数機器接続する場合使う機器が変わる毎にコードをつなぎ替える煩雑さが生じてしまうということを意味する。
しかしこの「EL2870U」に搭載されているHDMI端子は2つともHDMI2.0をサポートしているため、コードを繋ぎ変えるという作業が必要なくシームレスにやりたい事をできるため、とても良いと感じた。
その他の「EL2870U」のスペックや特徴については以下の通りだ。
「BenQ EL2870U」のデザインについて
「EL2870U」のデザインは特別変わっているわけではなく、至ってシンプルといった感じだ。
色味もBenQやゲーミングブランドのZOWIEがそうであるように落ち着いていて、反射が抑えられるようにマットな仕上げになっている。
ベゼルレスではないが、比較的コンパクトなベゼルになっているようだ。BenQロゴの入っている下の部分だけ、ボタンなどの都合上太くなっている。
最近スマホを含めディスプレイを搭載するデバイスはベゼレレスデザインを意識したものへと変わっていっているが、「EL2870U」は現状を維持している。
とは言え、必ずしもベゼレレスが正義かと言われると、僕はそうではないと言うだろう。
冒頭でも言ったように「EL2870U」は4K”ゲーミング”ディスプレイだ。
ゲームをする上で、集中力や没入感というのは欠かせないものだが、ベゼレレスデザインになるとゲームの画面以外の余計な映像が目に入り無駄な情報が増えてしまう。
これは集中力と没入感を損なうため、ゲームでの使用を考えるとベゼレレスは向いていないと考えている。
その点から見ても「EL2870U」がゲーミングディスプレイと呼ばれるのは頷ける。
「BenQ EL2870U」で画像モードやHDRをオンにする設定方法
「EL2870U」が映し出す映像は画像モードの選択によって性格が大きく異なるため、ゲームをする場合とPCでブラウジングをする場合と使い分けたほうが良いと感じる。
そこで「EL2870U」で画像モードを選択する方法や、このディスプレイの特徴とも言えるHDRのオンオフに関する設定方法について簡単に説明してみたいと思う。
とても簡単な設定方法ではあるが、何度かボタンを押す必要があり頻繁にゲーム画面とそうではない時の切り替えを行う場合は少々面倒だ。
ZOWIEのゲーミングディスプレイにあるように1ボタンで画像モードを変更できるリモコンのようなものがあれば更に良いと感じるが、頻繁に切り替えないのであれば全く問題ない点だ。
逆にHDRのオンオフや目への負担を軽減してくれるB.I+機能のオンオフはとても簡単で助かっている。
「画像モード」を変更する方法
画像モードやコントラストや輝度、そして「EL2870U」に搭載されている様々な機能のオンオフや数値を調整するためにはディスプレイ右下のボタンを押して設定を変更していく必要がある。
これまでにディスプレイの設定を変えたことがある人であれば、この「EL2870U」の設定を変更するのも簡単。
ここでは画像モードを変更する方法について簡単に画像で手順を書いておきたいと思う。
HDRやB.I+機能を変更する方法
HDRやブライトネスインテリジェンスPlus(B.I+)等の機能のオンオフはとても簡単だ。
ディスプレイ右下に搭載されているHDRボタンを押すことで、これらの機能のオンオフを簡単に切り替えることができる。
初期設定ではHDRやB.I+機能はオフに設定されているため、必要に応じてこのボタンをポチッと押すことですぐにHDRコンテンツを楽しむことができる。
また、目の負担を軽減させるためのブライトネスインテリジェンス(B.I+)機能は、周囲の明るさと色温度を検知して、ディスプレイの明るさを自動で調整してくれるというもの。
暗い部屋で白色などのような強烈な光をそのまま見続けるのは、目のことを考えると極力避けたいところ。B.I+は明るさを自動で調整してくれる事で、作業に集中しているときやゲームに夢中になっている時に自動で最適化してくれる。
明るさの変化を検知して、ディスプレイの設定を最適化した場合以下のようなアイコンが右下に出てくる。
この機能は明らかにへの負担を考えると優れたものであり、多くのデスクワークやストーリーに特化したゲームではとても使える機能だと感じる。
一方、先日発売さればかりの「CoD:BO4」等のようなシューティングゲーム、特に索敵を重要視するようなゲームでは必要ないと感じた。
誤解のないように付け加えておくが、FPSゲームでアイケア機能が必要ないと感じただけで、「EL2870U」とFPSゲームはとても相性が良い。
実際に「BenQ EL2870U」使ってみて感じたこと
「EL2870U」をゲームに使用して感じたこと
実際に「EL2870U」を作業やPCゲーム、そしてPS4等を用いて使ってみたが、結論から言えば4Kゲーミングディスプレイって凄いなあと感じた。
eSportsなどに特化したゲーミングディスプレイを使ったことがある人であれば、共感してもらえると思うが、あの手のゲーミングディスプレイは性能を見ればトップレベルに優れておりゲームでは欠かせないものだが、残念ながら映像美という観点で見れば贔屓目に見ても褒められたものじゃないのだ。
しかしこの「EL2870U」は応答速度が1msと優れていながら、映像美の観点でも優れている。144Hzであれば更に広いニーズに答えることができるだろうが、それは価格の面で致し方ない。
1ms応答速度で思った通りに操作できる感じを伝えるのはどうしても難しい為、映像美の面を伝えられたらと思う。
「EL2870U」はHDRに対応していることもあり、とても発色が良く4K解像度のゲームや写真を見ていると、思わず「綺麗だなあ…」と口に出してしまいそうになるほど美しい。
ディスプレイ越しの画像では分かりづらいと思うが、とても細かな部分まで色を表現できていると感じる。
「EL2870U」に使われているのはTNパネルになるため、当然IPSパネルを使用しているディスプレイを横に並べて比較すると流石に違いは分かるのだが、TNパネルの特徴としてあげられるような粗さは全く感じなかった。(見る角度による色の違いは感じる)
また、IPSパネルではなくTNパネルを使用しているため、よりリーズナブルな価格で販売することが出来ている。IPSパネルを使用している場合ではこうはいかない。また、IPSパネルは応答速度を早くすることが技術的に難しいという点も付け加えておく。
「EL2870U」の色の表現は特に緑が豊かだ感じたが、雪景色のような白色でも全く問題ない。
「EL2870U」には内蔵スピーカーも搭載されているが、スピーカーは各自用意したほうが良いだろう。
BenQの製品に内蔵されているスピーカーはとても優れたものが多く、「EL2870U」についても期待していたが控えめに言っても良いとは言えなかった。
「EL2870U」をデスクワークに使用して感じたこと
ディスプレイと言うのは人によりけりだとは思うが、必ずしもゲームだけで使うわけではない。
当然PCで作業を行うディスプレイとしても、ゲームを行うディスプレイとしても使うことが想定できる。
その場合、2つの用途でストレス無く使えることが必須条件になってくるが、しばらく「EL2870U」をデスクワークに使ってみたところ問題なく使える事がわかった。
「EL2870U」は発色が良いと伝えてきたが、これはゲームなどではメリットになるが、事デスクワークにおいては少々デメリットにもなり得る。
僕の目の状況にもよるだろうが、ゲームを使用する時と同じ画像モードでは少し青色の発色が強すぎる。
そのため、画像モードを「ブルーライト軽減」に設定することで目の疲れや刺激を抑えてくれるため、長時間のデスクワークでも問題なく使用できた。(ゲーム使用でB.I+を無効化してたら有効化にすることも忘れずに)
「EL2870U」は28インチの4Kディスプレイだ。多くの4Kディスプレイに言えることなのだが、PCに接続した初期段階ではあまりに文字が小さくなりすぎる。
そのため以下の手順で画面スケールを変更することが40インチよりも小さな4Kディスプレイで快適にデスクワークを行う為に必須になる。
- デスクトップのなにもないところで右クリックし「ディスプレイ設定」を選択
- 拡大縮小とレイアウトの欄までスクロール
- テキスト、アプリ、その他の項目のサイズを変更するを「125~150%」に変更(数値は好み)
- 念の為、解像度が「3840×2160」になっている事を確認する
僕は28インチでは150%、32インチでは125%の画面スケールで使用している。40インチでは100%
まとめ
4KHDRに対応した「EL2870U」の魅力は伝わっただろうか。
初めて4Kゲーミングディスプレイを使用したが、このジャンルは冒頭でも述べたが間違いなく伸びてくるはずだ。
「EL2870U」は28インチというサイズ感から、FPS等のシューティングゲームでも問題なく使うことができ、発色の良さからみてもストーリーに特化したゲームでも「おぉ…綺麗だなあ」と言いながら楽しむことができる。
FPS等のシューティングゲームでは24~28インチあたりが最も快適にプレイできる大きさだと思っている。これより大きな32インチなどでは、少し大きすぎるなと感じた。
そのため、28インチの「EL2870U」をオススメしたいユーザーは以下の通り。
FPS/TPS(PS4 Pro / Xbox One X) > ストーリー系(PS4 Pro / Xbox One X) = ストーリー系(PC) >>> FPS/TPS(PC/ 144Hz↑)
画像モードの選択により、性格が大きく異なるディスプレイのため設定が必要にはなるがこのゲーミングディスプレイはゲームだけではなくデスクワークにも使用できるとてもオールラウンダーなディスプレイだ。
「EL2870U」には兄弟ディスプレイ?として少しスペックが異なるもののほぼ同じ特徴を持つ32インチの4Kゲーミングディスプレイ「EW3270U」があるが、こちらはそのサイズ感から「EL2870U」よりも更にストーリーに特化したゲームで真価を発揮すると感じた。